喉から手が出るほど欲しいもの、それは名刺。
翻訳でも通訳でも、人の肩書と言うものは訳す上で本当に厄介なものです。何しろ、定訳がなく、その会社や部署で勝手に決めていることさえあるのですから。
たかが肩書と油断するなかれ。間違えると心象が悪くなることは想像に難くないと思います。特に僕のいたような役所ではかなり重要で、たとえば、本省の局長はDirector Generalで、国会で日常的に発言を求められるほどの高官ですが、Directorと訳した途端、「本省の課長」または「地方の部長」となり、ありえないほどの降格です。
肩書を知るのにベストの方法は名刺を入手することです。これに書いてあればとりあえずはやり過ごせます。ただし、名刺の中には怪しい英語もあります。会社内部で統一した訳語があるのではなく、社内で英語ができる人にお願いして英語を聞き、それを印刷しているということもあります。
それだけ苦労して訳語を見つけても、通訳ではそんなに傾聴してはもらえす(しかし、上述したように低い方に間違えると気分を害される)、翻訳の場合では文字数がそんなに多くないので儲からず…であんまり嬉しい言葉ではないんですけどね、肩書って。
そういえば、以前軍人の通訳をした時のこと。少佐が相手でした。仮にマッカートニー少佐としましょう。その方は海兵隊なのでMajor McCartneyとなるのですが、発言者の一人がなぜか「ミスターマッカートニーさん」と言ってました。ミスターを付けた上に「さん」って…。
しかも軍人相手にミスターを付けると、その人を軍人扱いしていないことになり、あまりよくないです。いくら丁寧にMisterと呼ぼうと、その人を軍人ではなく、軍属(軍に所属はしているが、人事部とか、会計課とか、戦闘と無関係な職種の人)または引退して軍人ではなくなった人、という扱いをしていることになります…。
あと、役所の肩書の英語一覧がネットで見られます。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/hourei/name.pdf
ちょっと古いですが、内閣官房がまとめたものですのでそこそこ役立つかと。