前の職場で学んだこと:元の訳語を勝手にいじらない。

翻訳通訳者たかぽん

2020年04月17日 00:30

ついこの前までしていたオンサイトの通訳翻訳で、なるほどと思ったアドバイスがありました。

 

ある書類の改訂版の翻訳を依頼されることが何度かありました。前のバージョンの追記・変更部分のみ訳すのですが、訳語にばらつきがありました。例えばdeviceの訳が「機器」と「器具」の両方がある、といったものです。

 

どちらかに統一した方がいいのでは?と提案したのですが、「訳を変えてしまうと、英語を解さず日本語だけを読む人は、『原文が変わった』と解釈するのでそのままにしてください」と言われました。これはこれで一理あるなと思いました。何でも改善すればよいとは限らないんですよね。資料によっては何百人にも配られるでしょうから、確かに混乱を招くかも。

 

では追記部分にdeviceがあったらどちらの訳にするか、は前のバージョンでの多数決…かな。それか、こちらが正しい!という根拠があればそっちを取るか。いずれにせよ悩ましいところではありますが。

 

それと少し関連して、多少時間を費やしてでも過去の資料を読んでおくことはメチャメチャ大切だと実感しました。読んでおくと、訳に困った単語に出くわした時、「あ、そういえばどこかにあったな。」と思い出す時ってありますよね。毎回じゃないですが。

 

今のdeviceの訳も、もし資料が何百枚もある環境であれば、拾い読みをしていけば「器具」と「機器」のどちらがmajorityかとかわかりますしね。クライアント向けと一般公開資料で使い分けているかも知れないし。

 

そういえば米軍基地の土地の「返還」の鉄板の訳語はreleaseなのですが、軍関連の専門家でないアメリカの政治家がreturnという表現をしているのを見たことがあります。一般の人にはその方が分かりやすいのでしょうね。

 

しかも今はPDFでも検索が容易にできるようになりましたので、正確にどの資料、とまで思い出さなくても「エクセルファイルで見た気がする」だけでも分かれば、そのエクセルを開いて検索するだけですからね。

 

というわけで今のお仕事でも用語集を大急ぎで読んでいます。知的好奇心が刺激されて面白いです。そのことはまた近々書きます。